時々、目が合う
ちょっとお道化た表情でどことなく昔を懐かしんでいるようにも見える
もう何年も前から綺麗なガラスケースの中、
錆びついた体を横たえて古傷を癒すようにのんびり隠居生活を送っている
きっと誰にもメモリアルルアーってあると思う
その人だけがずっと大切にしている記念の記憶
中学生の頃、先輩の「ラパラのジョイントが釣れる!」という
断定的な表現に導かれるように、
隣町の小さな釣具店まで懸命に自転車を走らせた
早速使ってみると、
まるで命が吹き込まれたかのように水の中をクネクネと泳ぎ回り、
文字通り水を得た魚だった
今風に言うと「ラパラジョイントしか勝たん!」的な感じだろうか
ほどなくして、
人生ではじめて、ルアーという玩具で魚を釣ることが出来た
もう言葉では到底表すことができない程の高揚感と喜びだった
その後もひとつのルアーがたくさんの感動を与えてくれた
当時の少年たちにとってRapalaはまさに神だったのだと思う
この間の健康診断の結果が来た、
どうも血液の数値がよくないらしい
まだガラスケースには飾ってもらえないので何とか頑張らないといけない
小さくない病気をした知り合いも何人か見てきた
大丈夫かなぁと心細そうに話しかけてみる
相変わらずお道化た表情で笑っている
何か少し疲れちゃったなと弱音を吐きながら
ちょっと薄くなってきた頭を撫でてみる
昼下がり、チャイムが鳴って
冷房の効いた涼しい部屋に夏を感じる火照ったダンボールが届く
描かれたイラストが楽しそうに口角をあげて笑っている
スマートフォンから注文した新しいルアー、本当に便利な時代になった
あれから何十年もたった今でも釣りに行く前日はわくわくが止まらない
ピカピカの引き締まった体に生意気そうな瞳、
やる気満々の若造が初陣を待つように顔を覗かせる
さて